「なければならない」「てもいい」「なくてもいい」「てはいけない」
前回扱った、みんなの日本語初級Ⅰの15課+17課の問題の続きだが、今回は教科書の問題ではない。
変換練習ができるようになった学生に、このような問題を出すと、なかなかできない。
【問】あなたの国のことを教えてください。
- ( )なければなりません。
- ( )なくてもいいです。
- ( )てもいいです。
- ( )てはいけません。
て形・ない形の変換ができたとしても、たとえば「わたしの国では、男と男が結婚しなくてもいいです」のような誤用が出てくる(実体験)。この文を見たとき、「えっ、あなたの国では同性結婚がふつうだけど、例外も認められてるの?」というのが日本語母語話者の自然な反応だろう。ただ、冷静に考えてみると(あくまでも論理的には、だが)同性結婚が認められている国で同性結婚を「しなくてもいい」というのは間違いではない。論理的に間違っていない以上、単純化して教わった非母語話者がこのような文を作ってしまうことをとがめることはできない。
では、どうして論理的に間違いではないのに、ネイティブにはおかしく感じられるのか。
続きを読む「Vてはいけません」「Vないでください」の練習問題
日本語教科書の『定番』であり、現時点でもおそらくは最大シェアを誇ると思われる『みんなの日本語 初級Ⅰ』の第二版が2012年に発行され、引き続き初級Ⅱや副教材なども第二版になりつつある。
文法シラバスに基づいたテキストであり、コミュニカティブアプローチや会話、タスク、Can Do主体の授業にしようとすれば必然的に工夫が必要になるが、「教科書《を》」教えるのではなく「教科書《で》」もしくは『教科書《も使って》』教えるのだと考えれば、確かによくできた文法テキストだと思う。
ただ、気になる点もある。たとえば、15課「~てはいけません」と17課「~ないでください」の練習B(文型を使った代入練習)が同じような設定になっており、この練習だけでは、学習者には二つの文型のニュアンスの違いが理解できない。
続きを読む「~に頼る」「~を頼りにする」「~を頼る」
中級教材『J501』の3課。本文では「人に頼る暮らし」、ことばのネットワーク練習問題では「アメリカに住んでいる知人を頼って、渡米しました」とある。
少なくとも、この2例において、「に」と「を」ではニュアンスが違う。さらに「~を頼りにする」と比較して3つのパターンについて違いを考えてみた。
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