違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ

日本語学校で教えている日本語教師の備忘的メモです。学術的な正確さは保証の限りではありません。このブログの記載は、勤務先の日本語学校の見解ではありません。随時修正・追記します。

iPhone欠席

そういえば以前在籍していたスコットランド出身の学生が、「イギリス人?」と聞くと必ず「スコットランド人です」と答えていたなあ……と思い出しながら、スコットランド独立否決のニュースを見ている。

 

さて。

今日は学期の修了式で、休み前最後(修了者にとっては日本語学校最後)の日なのだからぜひ出席してほしいわけだが、特に午前クラスで欠席が目立った。

徹夜組も含めて、iPhone 6購入の行列に並んでいたのだという。中には、iPhoneの予約を完了した後、授業の途中や終わった後に学校にやってきた学生たちもいた。聞けば大体、自分の分と友だちの分、2つを確保していたようである。ただ、即日入手ではなく予約になった学生も多かったようだ。このiPhone欠席・遅刻組の大半は中国からの学生だった。ベトナム学生は資金力がないし、欧米圏の学生は逆に初日購入ということ自体にあまり興味がないようだった。ただ、中国学生も転売目的というわけではないようだった。

 午前の授業後に、こんな質問をしてきた中国出身の女子学生もいた。

「勉強の質問じゃなくて申し訳ないんですが……国の友だちがiPhone6をほしいと言ってるんですけど、今から並んで買えますか?」

今から並んでもすでに受付可能数をオーバーしているかもしれないし、予約ができたとしても何時間並ぶかわからない。あまりにも大変だから、もし並ぶんならその友だちから謝礼をガッポリもらいなさい。なんて答えたわけだが、本人は新機種を発売日に買うことにさほど興味はなかったらしい。あっさりと断念した。

 

ネットのまとめサイトなどを見ると、「転売目的の中国人やホームレス」「連中が自分で使うとは思えない」みたいな叩き方が多いようで、まあ確かにそういう転売目的の人たちも多いのだろうとは思うが、今日並んでいた人たちの中の中国人すべてが転売目的というわけではない。確実に言えるのは、うちの学校の10月期初日の教室で、iPhone 6を誇らしげに扱う学生の姿が多数見られるだろう、ということだ。これは外れることのない予言である。

実際、心配になったので学生たちに「それ、ネットとかで売るんじゃないの?」と聞いたら、みんな真剣な顔で否定して、「1つは自分の、もう1つは友だち用」と、少なくとも不特定多数への転売目的ではないことを訴えてきた。彼らは意外と正直者(というかばか正直)で、もし転売するつもりなら、こんな質問に対しては「高く売れるんですよ!」と誇らしげに言ってくるはずなのだが、そういう学生は一人もいなかった。

そもそも、中国本土でも使いたい人が多いから転売が成り立つわけであって、「中国人が自分でiPhoneを使うわけがない、転売目的に違いない」などと決めつけるのはその時点で論理破綻と言わざるを得ないだろう。

留学生を使って仕入れようと企む者も確かにいるのかもしれないが、iPhone欠席組は、金儲けで並んでいるというよりは「いつも授業中にもスマホをいじってるような連中」であった、というのが正直な感想である。

なので、以下のような記事はウソではないと思うが、しかし、真実の一面しかとらえていないように思われるのである。


【iPhone 6】中国人が買い占め!? - 日刊サイゾー


iPhone6行列に大量の中国人の理由 : IT&メディア : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)


「iPhone 6」発売、中国人バイヤー殺到 「25万円までなら出す」 写真12枚 国際ニュース:AFPBB News

 

一方、次にリンクするサーチナの記事は、中国本土のアップルファンが何とかして入手したがっている(それで転売屋も暗躍している)、という趣旨だが、学生たちの様子を見ている限り、こちらの方が実態に即しているように感じられる。


サーチナ|「iPhone 6」を手にしたい中国人、あの手この手で入手画策=中国メディア

 

まあ自分で使うにせよ何にせよ、出席率を落としてまでiPhoneを買いに並ぶのはやめてもらいたいというのが、彼らの出席率が下がらないことを考え続けている日本語学校教員としての本音だ。

そして、iPhone欠席について担任の先生方と話したところ、「Apple日本語学校修了式の日にiPhoneを発売するのをやめてほしい」という、実現可能性の極めて低い(極めて意味のない)結論に落ち着いたのであった。

ちなみに、私自身はAndroid派である。