違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ

日本語学校で教えている日本語教師の備忘的メモです。学術的な正確さは保証の限りではありません。このブログの記載は、勤務先の日本語学校の見解ではありません。随時修正・追記します。

「なければならない」「てもいい」「なくてもいい」「てはいけない」

前回扱った、みんなの日本語初級Ⅰの15課+17課の問題の続きだが、今回は教科書の問題ではない。

変換練習ができるようになった学生に、このような問題を出すと、なかなかできない。

【問】あなたの国のことを教えてください。

  • (             )なければなりません。
  • (             )なくてもいいです。
  • (             )てもいいです。
  • (             )てはいけません。

て形・ない形の変換ができたとしても、たとえば「わたしの国では、男と男が結婚しなくてもいいです」のような誤用が出てくる(実体験)。この文を見たとき、「えっ、あなたの国では同性結婚がふつうだけど、例外も認められてるの?」というのが日本語母語話者の自然な反応だろう。ただ、冷静に考えてみると(あくまでも論理的には、だが)同性結婚が認められている国で同性結婚を「しなくてもいい」というのは間違いではない。論理的に間違っていない以上、単純化して教わった非母語話者がこのような文を作ってしまうことをとがめることはできない。

では、どうして論理的に間違いではないのに、ネイティブにはおかしく感じられるのか。

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