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違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ

日本語学校で教えている日本語教師の備忘的メモです。学術的な正確さは保証の限りではありません。このブログの記載は、勤務先の日本語学校の見解ではありません。随時修正・追記します。

伝聞の「そう。」が急増している

伝聞+「そう。」

という形の言い切りがコラム記事などで急増しているように思われる。

机にバラけて混ぜ混ぜする原始的方法ながらに1分執念で続ければ教授のテストをクリアするぐらいには混ざるのだそう。

国立天文台によると2015年4月4日の皆既月食は、皆既食だけでなく部分色のはじめから終わりまでを日本全国で見ることができるのだそう。

(いずれも下線部強調は引用者)

ここは本来「混ざるのだそうだ。」「見ることができるのだそうです。」のように、語末に断定の言葉が来なければならない。

何でもネギには抗菌・殺菌作用のある成分が含まれていて、喉の炎症を抑える効果があるのだそうです。

「○○そうだ/そうです」には2種類あり、様態をあらわす場合は「○○そう。」と言い切ってもかまわない。しかし、伝聞の場合は「そう。」が使えない……というのがこれまでの用法だったのだが、どうもここ数年で「伝聞+そう。」の言い切り形が増えているように思われる。詳細は続きで。

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「技能実習生としての外国人介護人材受入れ」への反応と私見

2015 年 2 月 4 日(水)、厚生労働省から「外国人介護人材受け入れの在り 方に関する検討会中間まとめ」が発表された。


外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会審議会資料 |厚生労働省

PDFはこちら↓

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000073122.pdf

これはあくまでも「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会 中間まとめ」であって、結論というわけではないのだが、公益社団法人日本語教育学会の反応は早く、2月6日に声明が出された。

http://www.nkg.or.jp/oshirase/2015/kaichoseimei.pdf
会長声明「技能実習生としての外国人介護人材受入れについて」 


公益社団法人日本語教育学会

これについて、思うところを述べてみる。

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1人の日本語教師が見る曽野綾子発言の問題点

多文化共生

曽野綾子氏が産経新聞のコラムで書いた「アパルトヘイト(人種隔離)許容発言」が物議を醸している。原文は下記のリンクで読める。

http://pbs.twimg.com/media/B9hkP4DIAAAGKYa.jpg

http://pbs.twimg.com/media/B9hkP4DIAAAGKYa.jpg

前半は、介護分野における労働移民について「資格や語学力といった分野のバリアを取り除く」ことが主張されており、後半で「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」と記されている。

特に問題視されているのは後段で、南アフリカヨハネスブルグのマンションに黒人が住むようになったら水が出なくなったというたった一つの、しかも出所不明・真偽不明なエピソードをもとに、「人間は事業も研究も運動も何もかも一緒にやれる。しかし居住だけは別にした方がいい」と述べている。

私は前段にも後段にも反対である。特に、曽野氏の最大の問題は、差別か区別かというところではなく、「文化的背景で区別された人たちは相互理解・共生することができない」と考えているところにあるのではないか、というのが今回の結論である。その理由を以下に述べる。ただし、私の発言は日本語教師を代表してというわけではないので、その点はご了承いただきたい。

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iPhone欠席

日本語学校の日常

そういえば以前在籍していたスコットランド出身の学生が、「イギリス人?」と聞くと必ず「スコットランド人です」と答えていたなあ……と思い出しながら、スコットランド独立否決のニュースを見ている。

 

さて。

今日は学期の修了式で、休み前最後(修了者にとっては日本語学校最後)の日なのだからぜひ出席してほしいわけだが、特に午前クラスで欠席が目立った。

徹夜組も含めて、iPhone 6購入の行列に並んでいたのだという。中には、iPhoneの予約を完了した後、授業の途中や終わった後に学校にやってきた学生たちもいた。聞けば大体、自分の分と友だちの分、2つを確保していたようである。ただ、即日入手ではなく予約になった学生も多かったようだ。このiPhone欠席・遅刻組の大半は中国からの学生だった。ベトナム学生は資金力がないし、欧米圏の学生は逆に初日購入ということ自体にあまり興味がないようだった。ただ、中国学生も転売目的というわけではないようだった。

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遅く返信します/先生はすごく助けてくれた

誤用:非母語話者共通

この数日に実際に来たメールより。一通目はフランス人卒業生。

メール遅く返信して本当にすみません。
 
とにかく先生はすごく助けてくれたので本当にありがとうございました。

二通目はベトナム人学生。

ごめんなさい ちょっと遅いです
宿題は遅く送ります!

まったく接点のない二人から「遅く送信する」「遅く送る」という表現が立て続けに来たので面白く感じた。これは母語の干渉というより、日本語の特性ということになろう。

あと、先生が尽力したことに対して「助けてくれた」という表現を使うのも、母語を問わずよく見られる表現である。

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「イ形容詞+です」問題 - 校正ツールEnnoのチェック内容から

日本語文法

開設から間もなく、アクセスもほぼゼロだったこのブログに、昨日、いきなり一万を超えるアクセスがあってびっくりした。前回のメモがはてなブックマークで注目されてしまったようだ。

LINE乗っ取り犯の「整理日本語言.txt」に見る「母語の干渉」 - 違いのわかる日本語――日本語教師の日本語メモ

さて、今回は少し前に話題になっていた「校正ツール」に関連して、「イ形容詞+です」問題を扱ってみたい。

ブロガー必見の文章校正ツール『Enno』が思った以上に便利だった! - 数学は中二で卒業しました

このEnnoという校正ツールが「必見」かどうか、などは別にして、私が興味を持ったのは、そのチェック内容の例である。画像を上記ブログから引用させていただく。

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nurahikaru/20140818/20140818083104.jpg

文章が「(過去または現在の)形容詞+です」で終わると、子どもに話しかけるときのような、あるいは小学生の読書感想文のようなつたない感じになることがよくあります。あからさまな間違いではありませんが、可能であれば他の形に書き直してみてはいかがでしょうか。

いわゆる「イ形容詞+です」問題である。日本語教育の現場では、初級テキストの初めの方に堂々と「今日は寒いです」という形が出てくる。これについて少々。

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LINE乗っ取り犯の「整理日本語言.txt」に見る「母語の干渉」

誤用:母語の干渉

LINEのアカウントを乗っ取り、その知人に金券カードを買わせるという詐欺行為が頻発している。その乗っ取り行為を行っている犯人は中国語圏出身者であるというが、その「台本」が誤って送られてきたという記事があった。

まさかの誤爆!LINE乗っ取り犯が“台本”を送信、その全文を公開 - 週アスPLUS

その文字起こしをした方もいる。

週刊アスキーが報じたLINE乗っ取り台本「整理日本語言(1).txt」の文字起こしと分類をしてみた。 - piyolog

日本語教師としては、この不自然な日本語訳に、日々接している中国人留学生の誤用と共通するものを見る。(※もちろん、私の接している中国人留学生たちを犯人扱いする気は毛頭ないどころか、このような悪事とは無関係であると信ずる。たまたまLINE乗っ取り犯と彼らの母語が一致しただけのことであって、「これだから中国人は……」というような悪しき一般化を行ってはならないことは言うまでもない。)

以下、あくまでも言語的、日本語教育的な観点での分析である。

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